親の介護が始まると、最初は「誰が病院へ連れて行くか」「誰が様子を見るか」という話になりがちです。しかし、介護が続くにつれて大きな問題になるのが費用の負担です。

介護サービスの自己負担、通院交通費、施設費、日用品代、食費、住宅改修費など、介護にはさまざまなお金がかかります。近くに住んでいる人が立て替え続けているうちに、兄弟姉妹との間で不公平感が生まれることもあります。

親の介護費用を誰が払うのかは、感情だけで決めると揉めやすい問題です。親の年金や預貯金をどう使うのか、足りない分を兄弟でどう分けるのか、早めに話し合っておく必要があります。

介護費用は介護サービス代だけではない

公的介護保険を利用する場合、介護サービス費用の自己負担は所得に応じて決まります。ただし、実際に家計から出ていくお金は、それだけではありません。

在宅介護では、紙おむつ、介護食、寝具、手すり、見守り用品、通院時の交通費、家族の帰省費用などがかかります。施設へ入る場合は、介護サービス費のほかに、食費、居住費、日常生活費などが必要になることがあります。

小さな支出ほど見落とされやすい

兄弟で揉めやすいのは、月額費用のような大きなお金だけではありません。病院までのタクシー代、親のために買った衣類、実家の掃除用品、役所手続きのための交通費など、小さな支出が積み重なります。

近くにいる人が「このくらいは自分で出しておこう」と支払い続けると、他の兄弟には負担が見えません。あとでまとめて不満を伝えても、「そんなにかかっているとは知らなかった」と言われることがあります。

まずは親のお金から支払えるか確認する

親の介護費用は、まず親本人の年金や預貯金から支払うことを基本に考える家庭が多いでしょう。親のための支出である以上、子どもが自分の生活費から負担する前に、親の収入と資産を把握することが大切です。

ただし、親の預金を使う場合は注意も必要です。通帳やキャッシュカードを誰が管理するのか、本人の意思をどう確認するのか、認知症が進んだ場合にどう対応するのかを考えておく必要があります。

一人だけが口座を管理すると不信感が出やすい

兄弟の一人だけが親の口座を管理していると、他の兄弟から「何に使っているのか分からない」と思われることがあります。実際には介護費用に使っていても、記録がなければ説明しにくくなります。

親の預金を介護費用に使う場合は、入出金の記録、領収書、支払い内容を残しておきましょう。月ごとに共有する仕組みを作ると、後からの疑いを減らしやすくなります。

兄弟で分担するなら基準を決めておく

親の年金や預貯金だけで介護費用をまかなえない場合、兄弟姉妹で費用を負担することがあります。このとき、全員が同じ金額を出すのか、収入や距離、介護への関わり方に応じて変えるのかを決めておく必要があります。

近くに住む人が通院や手続きを担うなら、遠方の兄弟は費用を多めに負担するという考え方もあります。反対に、費用は均等にし、実務は交代制にする家庭もあります。大切なのは、誰か一人が黙って負担を抱え込まないことです。

立て替え費用は精算ルールを作る

急な支払いでは、近くにいる人が一時的に立て替える場面があります。立て替えた日付、金額、内容を記録し、領収書を残しましょう。

その費用を親の口座から精算するのか、兄弟で按分するのか、毎月まとめて精算するのかを決めておくと、介護する人だけが損をする状態を避けやすくなります。

介護費用の備えとして保険も確認する

介護費用を兄弟だけで分けようとすると、負担が重くなりやすくなります。そこで確認したいのが、親が加入している保険です。

医療保険やがん保険は、入院や手術、所定の治療に関係します。民間の介護保険や介護特約は、所定の介護状態になった場合に給付を受けられることがあります。死亡保険は、万一の後の費用準備や相続時の現金確保に関係します。

子世代の備えも見落とさない

介護を担う子世代が病気になったり、収入が減ったりすると、介護体制そのものが崩れることがあります。親の保険だけでなく、自分自身の医療保険、就業不能への備え、家計の余力も確認しておきたいところです。

親の介護費用は、誰か一人が我慢して払うものではありません。親のお金、兄弟の分担、保険の活用を組み合わせて、介護する人だけに負担が偏らない仕組みを作っておくことが大切です。

出典:厚生労働省 介護保険の解説/生命保険文化センター