老後になると、病気やケガへの不安から医療保険を続けるべきか迷う人が増えます。公的医療保険があるから民間の医療保険はいらない、とは一概に言えません。一方で、不安だからといって高い保険料を払い続けるのも慎重に考えたいところです。老後の医療保険は、医療費そのものだけでなく、入院や通院に伴う費用まで含めて考えることが大切です。
老後の医療費は公的制度だけで考えない
日本では公的医療保険があり、医療機関で支払う自己負担には一定の仕組みがあります。さらに、高額療養費制度では、医療機関や薬局で支払う医療費が上限額を超えた場合、超えた部分が支給されます。上限額は年齢や所得によって異なります。
この制度があるため、治療費が青天井で自己負担になるわけではありません。ただし、医療に関するすべての出費が公的制度で補われるわけではありません。ここを見落とすと、医療保険の必要性を判断しにくくなります。
高額療養費制度で補える部分
高額療養費制度は、保険診療の自己負担が高額になった場合に負担を抑える制度です。入院や手術などで医療費が高くなったとき、家計を守る役割があります。
ただし、制度の対象は基本的に保険診療の自己負担部分です。入院中の食事代、差額ベッド代、先進医療にかかる技術料、通院交通費、家族の付き添い費用などは、別に考える必要があります。
見落としがちな入院時の自己負担
医療保険を考えるとき、多くの人は「入院したら治療費がいくらかかるか」を気にします。しかし、実際には治療費以外にも細かな出費があります。
差額ベッド代
差額ベッド代は、個室や少人数の病室を希望した場合などにかかる費用です。公的医療保険の対象外となるため、自己負担になります。病院や病室によって金額が異なり、入院日数が長くなるほど負担が増えます。
必ず差額ベッド代がかかるわけではありませんが、老後は体調や家族の事情によって、静かな環境や付き添いやすさを優先したくなることもあります。医療保険で入院給付金を持つ意味は、こうした周辺費用への備えとして考えるとわかりやすくなります。
食事代や日用品費
入院中の食事代や、パジャマ、下着、洗面用品、テレビカード、スマートフォンの通信費なども必要になることがあります。金額は大きく見えなくても、入院が続くと負担になります。
また、家族が見舞いや付き添いに来る場合は、交通費や駐車場代がかかることもあります。自宅から遠い病院に入院した場合、家族側の負担も無視できません。
通院治療にかかる費用
近年は、入院期間が短くなり、退院後に通院治療を続けるケースもあります。がん治療、リハビリ、検査、投薬などで通院が続くと、交通費や付き添いの負担が積み重なります。
医療保険を確認するときは、入院日額だけでなく、退院後の通院保障や一時金の有無も見ておきたいところです。ただし、保障を増やすほど保険料は上がりやすいため、貯金で対応する部分と保険で備える部分を分ける必要があります。
がん保険や入院保険はどう考えるか
老後の医療保険で悩みやすいのが、がん保険や入院保険です。がん治療は通院が長くなることもあり、治療費だけでなく生活面の負担も考える必要があります。一方で、すでに十分な貯金がある場合は、すべてを保険で備える必要がない人もいます。
がん保険は一時金の使い道を見る
がん保険には、診断時に一時金を受け取れるタイプがあります。一時金は、治療費だけでなく、交通費、生活費、家族のサポート費用などに使いやすいのが特徴です。
ただし、保障範囲は商品によって異なります。上皮内新生物の扱い、再発時の給付条件、通院保障の有無などを確認しないまま加入すると、思っていた保障と違うことがあります。
入院保険は日額だけで判断しない
入院保険では、1日あたりいくら受け取れるかに目が向きがちです。しかし、短期入院が多い場合は、日額よりも入院一時金や手術給付金のほうが使いやすいこともあります。
| 確認項目 | 見るべきポイント |
|---|---|
| 入院給付金 | 1日あたりの金額、支払限度日数 |
| 手術給付金 | 対象になる手術、給付倍率 |
| 通院保障 | 退院後の通院が対象になるか |
| がん保障 | 診断一時金、再発時、通院治療の扱い |
| 先進医療 | 技術料への備えがあるか |
医療保険が必要になりやすい人
医療保険の必要性は、貯金額、家族構成、健康状態、毎月の収支によって変わります。貯金が少なく、急な入院費用で生活費に影響が出やすい人は、医療保険が家計を守る役割を持ちやすくなります。
また、一人暮らしで家族に頼りにくい人、通院時にタクシーを使う可能性がある人、個室を希望する可能性がある人も、自己負担を想定しておくと安心です。
不要と決める前に確認したいこと
- 急な入院費用を貯金で払えるか
- 入院中の生活費や家族の交通費を考えているか
- 現在の医療保険の保険料が家計を圧迫していないか
- 保障内容が今の医療事情に合っているか
- 解約後に再加入できない可能性を理解しているか
老後の医療保険は残す保障を選ぶことが大切
老後の医療保険は、必要か不要かを一言で決めるものではありません。公的制度で補える部分を確認し、足りない部分を貯金で備えるのか、民間保険で補うのかを分けて考える必要があります。
高い保険料を払い続けている場合は、入院保障、通院保障、がん保障、特約の内容を確認してみましょう。必要な保障を残し、重複している保障や使う可能性が低い保障を見直せば、老後の固定費を抑えながら医療への備えを整えやすくなります。
出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」/生命保険文化センター「入院費用(自己負担額)はどれくらい?」/金融庁「保険を契約している方へ」





