ニュースで「円安が進んでいる」と聞いても、なぜ円安になるのか分かりにくいと感じる人は多いでしょう。
円相場は、1つの理由だけで動くわけではありません。日本と米国の金利差、物価、貿易収支、投資家心理、政府・日銀の政策など、さまざまな要因が重なって動きます。
円安は、家計や物価、企業業績、投資信託、米国株、外貨預金、FXなどにも影響します。特に50代以上が資産運用を考える場合、円安の理由を知っておくことは大切です。
この記事では、円安になる主な要因を5つに分けて、初心者にもわかりやすく解説します。
なぜ円安になる?円相場は1つの理由だけで動かない
円安とは、外国通貨に対して円の価値が下がることです。
たとえば、1ドル=130円から1ドル=150円になると、1ドルを買うために必要な円が増えます。この場合、円の価値が下がっているため、円安といいます。
円安が進む理由は一つではありません。日米の金利差、物価上昇、貿易収支、投資家の動き、政府や日銀の政策などが複雑に関係します。
そのため、「円安の理由はこれだけ」と決めつけるのではなく、複数の材料を組み合わせて見ることが大切です。
要因1:日本と米国の金利差
円相場を動かす大きな要因の一つが、日本と米国の金利差です。
一般的に、金利が高い通貨は投資家に選ばれやすくなります。米国の金利が日本より高い場合、円を売ってドルを買い、ドル建ての資産で運用しようとする動きが出やすくなります。
このような動きが広がると、円が売られ、ドルが買われるため、円安・ドル高につながることがあります。
米国では、FOMCが政策金利に関する決定を行い、声明や議事要旨を公表しています。(※1)一方、日本では日本銀行が金融政策を決定します。
円相場を見るときは、現在のドル円レートだけでなく、日米の政策金利や今後の金融政策の方向性も確認することが重要です。
要因2:日本と海外の物価・インフレ率
物価やインフレ率も、円相場に影響します。
日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率2%を「物価安定の目標」としています。(※2)物価の動きは、金融政策や金利の見通しに影響するため、円相場を見るうえでも重要です。
米国でも、CPIなどの物価指標が注目されます。米国のインフレ率が高止まりすれば、米国の金利が高い状態で続くとの見方が強まり、ドルが買われやすくなることがあります。
一方、米国のインフレが落ち着き、利下げの見方が強まれば、ドル高が一服し、円高方向に動く可能性もあります。
つまり、円相場を見るときは、日本の物価だけでなく、米国の物価や金融政策もあわせて確認する必要があります。
要因3:貿易収支とエネルギー価格
日本は、エネルギーや食料品、原材料などを海外から輸入しています。そのため、原油価格や天然ガス価格が上がると、輸入額が増えやすくなります。
輸入額が輸出額を上回る状態が続くと、海外へ支払うために円を売って外貨を買う需要が増え、円安につながることがあります。
財務省の貿易統計では、日本の輸出額、輸入額、差引額などを確認できます。(※3)円相場を見るときは、貿易収支が黒字なのか赤字なのか、エネルギー価格がどう動いているのかも重要です。
ただし、貿易収支だけで円相場が決まるわけではありません。金利差や投資マネーの動きも大きく影響します。
要因4:投資家のリスク回避・リスク選好
円相場は、投資家心理によっても動きます。
世界的に株価が上がり、投資家がリスクを取りやすい局面では、高い利回りを求めてドルや新興国通貨、株式などに資金が向かうことがあります。
一方、金融危機や地政学リスク、世界的な株価下落が起きると、投資家はリスクを避ける動きを強めることがあります。
過去には、リスク回避局面で円が買われる場面もありました。ただし、近年は金利差や日本経済への見方も影響するため、必ずしも「不安なときは円高」と単純には言えません。
円相場を見るときは、株式市場、米国債利回り、原油価格、地政学リスクなどもあわせて確認すると、背景を理解しやすくなります。
要因5:政府・日銀の政策や為替介入への警戒
急激な円安や円高が進むと、政府や日銀の発言が注目されます。
財務省は、為替相場が短期間に大きく変動するなど不安定な動きを示すことは好ましくないとして、為替相場の安定を目的に外国為替平衡操作、つまり為替介入を行うことがあると説明しています。(※4)
為替介入への警戒感が高まると、市場参加者が円を買い戻したり、ドル売りを進めたりすることがあります。
ただし、為替介入は常に行われるものではありません。また、介入があっても長期的な円相場の流れを変えられるとは限りません。
政府や日銀の発言は短期的な値動きに影響しやすい一方、長期的には金利差、物価、貿易収支、経済成長などの基礎的な要因も重要です。
円安が続くかどうかを見るときのポイント
円安が続くかどうかを考えるときは、以下の点を確認するとよいでしょう。
- 日米の政策金利差は縮まるのか、広がるのか
- 米国のインフレ率は落ち着いているか
- 日本の物価や賃金はどう動いているか
- 日本の貿易収支は改善しているか
- 原油価格やエネルギー価格はどう動いているか
- 政府・日銀の発言や為替介入への警戒感はあるか
- 世界の投資家がリスクを取りやすい状況か
これらの材料は、日々のニュースや経済指標で確認できます。
ただし、円相場を正確に予想することは簡単ではありません。短期的には予想と逆に動くこともあります。
円安理由を知ると投資判断にも役立つ
円安の理由を知ることは、家計管理だけでなく、投資判断にも役立ちます。
たとえば、米国株や全世界株式の投資信託を持っている場合、円安になると円換算の評価額が増えることがあります。一方、円高になると、外貨建て資産の円換算額が減ることがあります。
外貨預金やFXでは、為替の動きが直接損益に影響します。NISAで海外株式型の投資信託を買う場合も、為替リスクは避けられません。
特に50代以上が資産運用を考える場合は、円安だからといって急いで外貨建て資産に集中するのではなく、預金、円建て資産、外貨建て資産のバランスを考えることが大切です。
円安の理由を理解すれば、ニュースに振り回されにくくなります。現在値だけでなく、金利差、物価、貿易収支、政策、投資家心理をセットで確認しましょう。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品や為替取引を推奨するものではありません。投資判断は、ご自身の資産状況やリスク許容度を確認したうえで行ってください。
出典:
※1:Federal Reserve「FOMC meeting calendars, statements, and minutes」
※2:日本銀行「2%の『物価安定の目標』」
※3:財務省貿易統計「Trade Statistics of Japan」
※4:財務省「外国為替平衡操作の実施状況」





